+1

2015/10/07

シリア難民問題について、ヨーロッパの友人に考え方を聞いてみた



2年前、シリア内戦に関する記事を書いた。それから2年経って、難民問題はヨーロッパにも直接関わるようになってきた。なんだか気になって、友達と話してみた。

参加者:マルコ(from イタリア)、アレックス(from ノルウェイ)、にゃかもと(スロベニア企業で働く千葉県民)、ゆうた(ぼく)

(イントロ)日本で働くヨーロッパ人エンジニアに聞く!日本で働く動機とは?

ゆうた:まず、外国で暮らすことについて考えよう。外国人が日本で働く時に壁になることってなんだろう。言葉かな。
アレックス:日本に住む外国人って、日本語に元々興味がある人も多いと思うよ。僕らがアジアから出稼ぎに来た外国人じゃなく、ヨーロッパから来てるのもあるけれど。
マルコ:日本を選ぶ理由には、日本でしかやられていない技術を習得しようという気持ちがある人が多い。エンジニアのことしかわからないけど、金銭面で見ると、日本の給料は高くない。今は特に円安だし。お金目当てで日本に来る人は少ないよ。
にゃかもと:そうだね、ヨーロッパに比べたら日本の給料は低い。スロベニアの給料はもっと低いけど。




マルコ:逆に日本のバイトの給料は高いけどね。エンジニアの給料を時給換算すると、1000~1500円だったりする。アルバイトと変わらないじゃん。
ゆうた:その分社会保障の負担を考えると、手元に残る差額は日本もヨーロッパも変わらなかったりしないかな。
マルコ:そうかもね。ちなみにイタリアは税金が40%くらいある割に給料が低いから、住みやすい国だとは思わない。あと、イタリアでは外食が高かったりして、生活コストは日本に比べて高いかもね。もちろんEU圏内の国によっても差があるよ。僕の友達のイタリア人は、イタリアだと給料の割に生活コストが高くて一人暮らしできないから、ポーランドに移住して、ハッピーに暮らしてる。
ゆうた:日本の外食代が安いのは、飲食店の従業員の給料が低いのもあるけどね。

難民問題の肌感覚

ゆうた:じゃあそろそろ難民について話を移すと、難民は皆ドイツを目指す。そこに果たして本当に仕事の機会や福祉はあるのかしら。
アレックス:難民は失業率よりも、福祉の充実さを見ると思う。きちんとしたところで寝たいっていう、まずはそこを求めるんじゃないかな。
ゆうた:2人にとって難民問題って、肌感覚としてどう?イタリアとノルウェイだとだいぶ違うんじゃないの?
アレックス:そうだね、難民はシェンゲン圏内の福祉が豊かな国、ドイツや北欧を目指す。ノルウェイはシェンゲンの国だけど、一番奥。イタリアは入り口だからね。
マルコ:イタリアには難民の問題は昔からある。特に、カダフィ政権下のリビアや、アラブの春が初めて起きたチュニジアからの難民がいる。ベルルスコーニとカダフィ政権は仲が良かったから、イタリアは難民を受け入れる代わりにカダフィに「問題解決費用」としてお金を渡し、暴力を無視してきたこともあった。それで一時的に難民は減ったけど、リビアが内戦になってから難民の数は感覚として倍くらいになり、アラブの春が起こって倍になり、さらに今回のシリアで倍になった、という感じ。
難民がシェンゲン圏内に来る際の入り口は、ギリシャ、イタリア、ハンガリー。イタリアは特に、アフリカから入ってくる人たちの入り口になる。例えば、シチリアのさらに南、地中海の真ん中にランペドゥーザ島という島がある。この島はアフリカから最も近いシェンゲンの地域になる。この島には、とても大きな難民収容施設がある。




アレックス:でもこの島からドイツには行きにくいよね。イタリア半島の南端についたら、電車とかでドイツや北欧に行って難民申請出せるけど、この島にたどり着いたら、イタリアに難民申請出すしか無い。
ゆうた:リビアだろうとシリアだろうと、難民はみんなドイツや北欧を目指すの?
マルコ:彼らもイタリアの状態を知ってると思うよ。イタリアの問題は、難民それ自体が問題ではなく、難民を管理する人たちの態度や政治に問題があると、僕は思う。イタリアでは特に、難民に対する支援をすると言って、国やEUから支援金を受け取り、それを別のことに使ってしまう人達がいる。ドイツはなんでこんなに大勢の難民を受け入れる体制があるんだろう。
アレックス:今この問題が大きいから、一時的にルールを変えているんだろうね。長期的な解決手段じゃないと思うけど。
にゃかもと:ドイツにはネオナチみたいな移民排斥の姿勢をみせる右翼もいるけれど、メインストリームは第二次大戦の反省から、難民を受け入れる体制を見せている、と言う話を本で読んだ。
マルコ:僕はそうは思わない。戦争からの反省を見せているのは、日本とアジア諸国の間の話。ドイツの人は、戦争時のドイツと現在のドイツを別のものと考えている。彼らが難民を受け入れるのはもっと実際的な考え方からきている。
ゆうた:日本に話を移すと、日本には去年は5000人くらいの難民申請者がいたんだけど、日本政府が受け入れたのは10人弱だったんだって。
にゃかもと:調べたら、難民申請を取り下げた理由の例が出てきた。これ、本当に代表的な事例なんかしら。

 (※参考)法務省ホームページ:平成26年における難民認定者数について

異文化の人たちが入ってくることの影響とは?

ゆうた:難民が入ってくることの問題点に、それによって治安が悪くなる、という話がある。あ、ここでの話は、難民、移民共通した話かも。
マルコ:どのように治安が悪くなるの?
アレックス:例えば、犯罪が増える可能性がある。ある文化を持った人たちが、一気に入ってくると、元々住んでた人たちのモラルとどのように折り合いをつければいいかわからず、摩擦が生じる可能性がある。
マルコ:でもそれで、本当に犯罪が増えるかな。
アレックス:最近の歴史で、最も難民(移民)が多かったのって、例えば第一次・第二次大戦時期のアメリカ。ニューヨークには、アイルランドやイタリア系の移民の一部がマフィアになり、治安が悪くなった時期があった。いずれにせよ僕は、難民が入ってくるスピードは、それを受け入れる社会の余裕の範疇内であるべきだと思う。ノルウェイの人口は500万人と少ない。それでも首都オスロの移民の数は、大体20%にもなる。これは多いんだけど、徐々に移民を社会の中に取り込んできた結果なんだ。今年ドイツは、80万人を一気に受け入れようとしている。これはドイツの人口の1%になる。…これってどれくらいの数字なんだろう。ヨーロッパの人口は、大雑把に5億人くらい。この全ての国が1%ずつ難民を受け入れたら、500万人くらいを受け入れることができることになる。
ゆうた:国外に流出しているシリア難民の数と大体一緒だね。文化を持ち込む、って話だと、中国人ってどの国でもチャイナタウンを作って、文化を持ち込む。でもそこで、治安が悪くなったって話を聞いたことがない。これは中国人なりの異文化処世術なんだろうし、シリアや他の国の人にも、彼らなりの溶け込み方はあるんだろうね。

受入国は何を考えたらいい?

にゃかもと:難民が入ってくるスピードって話が出たけど、難民は母国に帰りたいのかな?
マルコ:そりゃ帰りたいんじゃない?
にゃかもと:難民も受入国も、難民がどれくらいの期間で母国へ帰ると思っているんだろう。僕は3パターンあると思っている。1つ目は、あくまでヨーロッパには一時滞在する人たち。この人達は、数年経って母国が落ち着いたら国に帰りたいと考えている。2つ目は、機会があれば母国に帰りたいと望むんだけど、中長期にわたって国外にいることになる人たち。3つ目は、そもそもこれを機会に前から行きたかったヨーロッパに移住する人たち。
アレックス:難民が受入国で仕事を見つけて、税金を納めるようになったら国にとっても大きなメリットになる。
ゆうた:じゃあ難民が仕事を見つけられるようになるためのトレーニングも、受入国では重要になるってことかしら。
マルコ:どんなトレーニング?言語?シリアはアラビア語だけど、イタリアのテレビで毎日やっているニュースのインタビューでは、難民は皆英語で答えてる。シリア難民はネアンデルタール人じゃない。着の身着のまま逃げなきゃいけなかったから見た目は貧しそうだけど、特に今ヨーロッパにたどり着いている人たちは、シリア国内でもITをはじめ各種スキルは高い人達だよ。
アレックス:例えばイタリアからドイツまで電車で行こうとすると、大体1000ユーロくらいかかる。今ヨーロッパに来てる人たちは、最低限の資金も持ってる人たちってことだね。ちなみに大戦中、ヨーロッパからアメリカに逃げるのも、大体1000ユーロくらいだったらしいよ。第二次大戦の時、ヨーロッパでは数十万人が難民になってアメリカへ渡った。
マルコ:受入国の話をするときに、例えば今ハンガリーの国境での対応がニュースになっている。あれは一見ハンガリーが悪いように見えるけど、本当の問題は、EU全体の方針が決まっていないのに、ハンガリーだけに問題が集中しちゃったこと。あの対応は仕方ないと、僕は思う。


アレックス:話は飛ぶかもしれないけど、今の状態は、たまたま大きなニュースになっているだけで、10年前に比べて特別ヒドくなったわけじゃないし、10年後にももっとヒドくなるわけじゃない。人の生活は年を追うごとに良くなっている。戦争で死ぬ人も、病気で死ぬ人も、飢餓に苦しむ人も減っている。
マルコ:それは今は昔に比べて、戦争で問題を解決することができなくなったからで、問題の数自体が減ったとは言えないんじゃない?いずれにせよ僕達にできるのは、その問題に関わっている人たちを無視するか、受け入れ方を考えるか、できることは2つしか無い。
アレックス:ある国が外国人を受け入れることを考えるとき、受入国に利益をもたらすのは、難民じゃなくて金持ちなんじゃないの?
マルコ:イタリアでも移民がGDPの増加に繋がっていることは、統計で示されている。ドイツでも同じことだし、ドイツがおおぜいの難民を受け入れた理由はそれもある。GDPで興味深いのは、国のトータルの税収の中で、最多数を占めるのは低所得者層だということ。彼らはイタリア人がやりたくない仕事もやってくれるし、収入に対して税金を払う割合も高いし、消費も多い。なにより、母集団の人数が多い。
アレックス:ただ仮に、難民が受入国に数年間いるだけだったら、仕事をする気もないかもしれないし、そうしたら経済的にプラスにはならないよね。
マルコ:もし経済的に持続可能じゃなかったら、何かしらやり方を考えなきゃダメだよね。僕はドイツが80万人も受け入れるって、今日はじめて知った。すごい数字だな。

難民問題の「解決」って?

ゆうた:ヨーロッパは今後シリア紛争解決に介入するのかしら。シリアには資源がないことなどから、欧米は積極的にシリア紛争解決には介入してこなかった。でもシリアからの難民が大量に流入しているっていう利害関係が生じたことは、ヨーロッパがその紛争を積極的に解決するモチベーションになるのかな。
にゃかもと:ヨーロッパはアメリカと一緒に、元々反政府軍に武器を売っていた経緯があることから、元々利害関係はあるよ。今は反政府軍がテロ組織化してきちゃって、介入しづらい状態にある。そこにISISも絡んで、もうめちゃくちゃ。僕は正直、シリアは今後数十年は立ち直れないんじゃないかと思ってる。
マルコ:数年前、日本人の友達をローマに案内していた時の話。どこかの観光地の切符売り場で、とても語学が堪能な人がいた。僕にはイタリア語で、その友達には日本語、ほかの人には他の言語で、もとてもフレンドリーに話しかけていた。そいつに「ワオ、すごいね。どこでそんなに言葉覚えたの?」って話しかけたら、彼はシリア人だと知った。色々話すうちに、ヨーロッパがシリアに武器を売っていることを彼の口から聞き、初めてこの問題を知った。紛争のきっかけを知るのに、シーア派とスンニ派の対立の話は外せない。最近わかりやすいウェブサイトを見つけたんだ。


http://waitbutwhy.com/2014/09/muhammad-isis-iraqs-full-story.html

マルコ:人類始まって何千年も経って今の文化がある。日本人だって、今は似た人種しかいないけど、これだって幾つかの民族のインテグレーションの結果。これからも、どんな文化でも放っておいても民族間の移動や混在はあるし、止められない。…今回の難民の話に戻ると、命の危機に瀕している難民を前にして、受入国側の事情で、スピードの議論をしているのは正しくないんじゃないかな。受入国側もちょっと無理しなきゃいけないんじゃない?理想の社会変化速度は結果であって、コントロールすべきものじゃないと思う。
アレックス:あくまで僕も、なるべく大勢の難民を受け入れるのは必要だと思う。でもやっぱり何にしても変化のスピードは大事だと思うよ。文化は変わる。でも変わるのが、自分たちの世代で変わりたいと思うのか、自分たちは変わりたくないけど子供の世代で変わって欲しいと思うのか、どちらもいてもいいと思う。ノルウェイみたいな小さな国だと、仮に80万人の難民を受け入れて、あまりに早く社会が変わっちゃったら、経済が壊れちゃうこともあるかもしれない。
マルコ:やっぱり何人を受け入れるかを決めるパラメータとして、経済的余裕、他文化を受け入れる精神的な余裕、仕事の数、なんかはあるけど、理想の社会変化速度はパラメータにすべきじゃないな。
ゆうた:そこで言う「余裕」も、パラメータじゃなくって、理想な社会変化速度から計算される結果じゃない?
マルコ:パラメータの相対依存性。

ゆうた:難民問題の「解決」ってなんだろう。難民キャンプにたどり着くことなのかな。母国の紛争が終わって、元通りの生活をスタートすることなのかな。それとも新天地で居場所を見つけることなのかな。3.11でもともと住んでたところを失って、仮設住宅に移った人にも同じことが言える。
にゃかもと:でも福島の人たちにとっては、別の土地に移ることは解決じゃないと思うよ。
ゆうた:でも仮に、物理的に元の生活に戻れない場合、新天地で新しい生活を始めるしか無い。偽善的に聞こえるかもしれないけれど、難民問題の解決は、難民自身の心の持ちようにあると思う。例えば難民キャンプに資金援助する代わりに、カウンセラー1000人送り込みます、そして難民に、「あなたはここにいてもいいんです」って思わせるのも解決策かもしれない。
にゃかもと:日本がずっとやってきたような、難民は受け入れないけど、難民キャンプにお金を渡す、っていうのも解決策じゃない?例えばトルコにたくさんある難民キャンプに。難民を受け入れることはそれだけじゃ解決じゃないよね。
マルコ:難民キャンプは解決策じゃない。難民を社会に受け入れて、「普通の生活」に戻すチャンスを与えてあげるのが、ひとつの解決だと僕は思う。自分の未来を自分で決めることができる状態にすること。それだけ。

おわり。

0 件のコメント:

コメントを投稿

copyright

当ホームページ掲載の記事、写真、イラスト等の無断掲載を禁止します。
(c)2008- Yuta. ALL Rights Reserved.